魂の集うふるさと サハリン永住帰国者のお墓
Posted: 2016.08.21
2016年5月に札幌市郊外の霊園にできたサハリン残留邦人のためのお墓は、
こんな表現がぴったりの特別な場所になりました。
樺太と日本をイメージした向かい合う2本の円筒形の墓石、その間には2つの国を隔て、
そしてつなぐ海と空を表したブルーのガラスがはめ込まれています。
北海道とサハリンの間はわずか43キロ。
戦後、残留を余儀なくされた方々がその海を越えるのに40年以上かかりました。
祖国に戻りたいと願いながら亡くなった母は、
空を飛ぶ鳥を見ては「自由にどこへでも行けるあなたたちが羨ましい」と泣きながら呼びかけていた。
永住帰国した女性からそんな話を聞き、多くの残留邦人が抱いたその想いを、
墓石に彫った2羽のカモメに託しました。魂はどこへでも自由に行き交うことができます。
はるかロシアの地に葬られた方々の魂は、お墓ができた今、いつでもここに集まることができるのです。
落成式の日はまぶしいほどの青空が広がりました。
「お墓がなくては死ねない」といっていたのは、一緒に永住帰国したAさん(92)とBさん(84)。
この日2人は「お墓ができたから、今度は長生きできるね」と笑顔で話していました。
7歳の時に祖母に預けられ、樺太に渡った両親とは生き別れとなってしまったCさん(83)は、
両親の写真をお墓に納めたあと「最後は私のところに帰ってきてくれた」と涙を流しました。
一緒に帰国するつもりだった夫と娘を相次いで亡くし、サハリンに葬ったDさん(80)は、やっと家族揃っての永住が叶ったと安堵の表情でした。
亡き両親の、夫の、子どもたちの名前を墓碑銘に刻み、写真を墓に納めた方々。
お墓への思いは私たちには想像もできないほど深いものでした。
札幌に永住したEさん(72)は東京に永住したFさん(69)に「お墓には一緒に入ろうね~」と電話していました。
<魂が集う>このお墓は、亡くなった方だけでなく生きている人たちの心をもつないでいるのです。
上記文:NPO日本サハリン協会 代表 斎藤弘美氏
写真や手紙などを入れるポストを付けました。