お墓をまとめるには、どうすればいいの?
費用はどれくらいかかる?
家族や親族のお墓を1つにまとめる「寄せ墓」は、継承者不足やお墓の維持管理にかかる負担軽減といった理由から注目されています。
寄せ墓にはいくつかの方法があり、お墓を建てるかによっても費用が変わるため、進め方を事前に決めておくことが大切です。
そこで今回は、お墓をまとめる寄せ墓の3つのパターンと費用相場、手順についてわかりやすく解説します。
- お墓をまとめる「寄せ墓」3つのパターン
- お墓をまとめるときの費用相場は100〜200万円
- お墓をまとめるときの手順7ステップ
- お墓をまとめるときによくある質問
最後まで読むと、お墓をまとめるときに、何から手をつければいいかわかりますよ。
「寄せ墓」でお墓をまとめると維持管理が楽になる
寄せ墓とは、複数ある遺骨をひとつにまとめて供養することを指します。
何代も続いている家のお墓では、いくつもの個人墓や夫婦墓が、1つの区画内にあり、お参りに苦労していることがあります。
また、最近はお墓を受け継ぐ人がいないことが問題になることも少なくありません。
こうした背景から着目されているのが、お墓をまとめる「寄せ墓」です。
寄せ墓をすることで、お参りや手入れがひとつの場所で完結し、供養も掃除も楽になります。
そして、お墓をまとめることで墓地の管理費も抑えられるため、経済的な負担の軽減にもつながります。
お墓をまとめる「寄せ墓」3つのパターン
お墓をまとめる場合は、まずはご自身の希望する寄せ墓のスタイルを知ることが大切です。
寄せ墓には、以下の3つのパターンがあります。
- 複数のお墓をまとめる
- 土葬の古いお墓をまとめる
- 両家の墓をまとめる
それぞれ、詳しく解説します。
1.複数のお墓をまとめる
寄せ墓には、複数の場所にあるお墓をひとつにまとめる方法として、今ある既存のお墓に他のお墓の遺骨を移す方法と、新たにお墓を建てて遺骨をまとめる方法があります。
どちらの場合も、移動元のお墓は「墓じまい」を行い、遺骨を移す必要があります。
墓じまいの手続きには、改葬許可証の取得が欠かせません。
市町村の役所で申請書を入手し、埋葬証明書や受入証明書を含む書類を揃えて提出する必要があります。
墓じまいについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
2.土葬の古いお墓をまとめる
日本では、昭和初期まで土葬が行われていたため、土葬の古いお墓がある方もいます。
寄せ墓には、土葬のお墓を掘り起こして遺骨を取り出し、1つのお墓にまとめる方法もあります。
しかし、時間が経過すると遺体は土に還るため、古いお墓では遺骨が出てこないことも少なくありません。
その場合は、埋葬場所の土をもらい、遺骨の代わりとします。
遺骨が見つかった場合は、洗浄後に火葬を行い、新たなお墓に埋葬するのが一般的です。
土葬のお墓をまとめる場合は、改葬許可証とあわせて、火葬許可証も市町村の役所で合わせて取得しましょう。
3.両家の墓をまとめる
寄せ墓には、異なる姓の故人をひとつのお墓に埋葬する「二世帯墓」や「両家墓」を建てる方法があります。
両家のお墓をまとめるときには、1つの区画に家ごとの墓石を建てるか、1つの墓石に両家の家名を刻みます。
また、家名以外の好きな言葉を入れたり、複数の遺骨を納める納骨室の上に五輪塔を建てることも可能です。
なかでも、五輪塔を建てる方法は、昔から行われてきた伝統的な手法です。
ただし、墓地や霊園によっては二世帯墓を禁止しているところもあるため、事前に確認しておきましょう。
そして、両家の宗教や宗派が違う場合は、改宗や改派が必要になることもあります。
お墓をまとめるときの費用相場は100〜200万円
お墓をまとめるときの費用を、事前に理解しておくといざまとめようとしたときにも慌てずに済みます。
寄せ墓の費用相場は、100〜200万円です。主な内訳と項目ごとの費用相場は下表をご覧ください。
項目 | 費用相場 |
---|---|
古いお墓の撤費用 | 約18万〜60万円程度 |
新しいお墓にかかる費用 | 約100万〜200万円 |
閉眼法要・開眼法要にかかる費用 | 約2万〜5万円 |
それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。
古いお墓の撤費用
古いお墓をまとめる場合には、今ある墓石の撤去費用がかかります。
撤去費用は墓石の大きさや墓域の広さによって変わりますが、相場は1平方メートルあたり約10万円です。
また、山間部にお墓がある場合や、撤去に重機が必要になる場合や、墓域の広さがある場合、墓石が複数ある場合などには、撤去費用が高くなることもあるため注意が必要です。
反対に、立地条件やお墓の形によっては相場よりも安くなるケースもあります。
なお、墓石の撤去は、極端に安い費用の業者への依頼は避けましょう。
不法投棄や正しい手続きを行わないリスクがあるため、信頼できる石材店に依頼することが大切です。
新しいお墓にかかる費用
お墓をまとめるときには、新しいお墓を設置する費用がかかります。
一般的に、新しい墓石を購入する場合には約100万円から200万円が相場です。
墓石のデザインや素材によって価格が変わり、五輪塔や墓誌を立てる場合は費用は高くなります。
新しいお墓を建てるには、墓石の料金だけでなく、石材の運搬や設置作業、周辺の整備費用などもかかります。
事前に石材店に見積もりを依頼し、費用を確認しておきましょう。
閉眼法要・開眼法要にかかる費用
お墓をまとめるときには、閉眼法要と開眼法要という仏教の儀式を行います。
閉眼法要は、現在のお墓や仏壇から魂を抜き供養する儀式で、開眼法要は新たなお墓や仏壇に魂を入れる儀式を指します。
お布施やお礼の相場は、1回につき約2万円から5万円です。
また、閉眼法要や開眼法要を行う際には、お供え物や祭壇の準備に費用がかかることもあります。
地域や宗派によって費用の幅があるため、事前に経験者に相談し、費用感を聞いておくのも方法の1つです。
費用を抑えるコツ
寄せ墓にかかる費用を抑えるには、いくつか方法があります。
例えば、古いお墓の竿石(名前が彫刻されている拝み石)を撤去せずに、墓所内に並べて保管するという方法があります。
石碑の処分費がかからないため、撤去にかかる費用を削減することが可能です。
また、新しいお墓を建てずに、既存のお墓のひとつに遺骨を集める方法もあります。お墓を建てる必要がないため、経済的です。
一つの石碑にカロートをそれぞれの分家や名字が違う家ごとの分けることもできるので、世代が変わって一部のご遺骨を改葬することが、将来容易になります。
ただし、古いお墓をどうするかは、独断で決めるのではなく親族にも相談して、家族の同意を得ておくことも大切です。
墓じまいには、それぞれの地域性や風習、石材店の考え方にあった方法があります。
相見積もりをして、価格だけではなく内容も比較して、依頼する石材店を選びましょう。
お墓をまとめるときの手順7ステップ
お墓をまとめる手順を事前に知っておけば、何から手をつけるべきかがわかります。
寄せ墓をするときには、以下のステップに沿って進めましょう。
- 家族・親族の合意を得る
- 墓地・霊園の管理者に相談する
- 改葬の手続きをする
- 石材店に見積もりを依頼する
- 閉眼法要をする
- 遺骨を取り出して工事をする
- 開眼法要をする
それぞれの手順を、詳しく解説していきます。
1.家族・親族の合意を得る
お墓をまとめると決めたときには、まず家族や親族の合意を得ることが大切です。
お墓をまとめることに対して抵抗感を抱く方もいるかもしれません。
中には、「お墓をまとめると不幸になる」などの考えを持っている方もいるため、慎重に話し合いを進めることをおすすめします。
寄せ墓について話し合うときには、なぜまとめる必要があるのかを説明し、祭祀や法要についても伝え、十分な理解を得るよう努めましょう。
親族全員の意向が揃ってことで、スムーズに進めやすくなり、後のトラブルを防ぐことにもつながります。
2.墓地・霊園の管理者に相談する
次に、お墓をまとめることを、墓地や霊園の管理者に相談しましょう。
寺院墓地であればお寺、公営墓地であれば管理事務所や自治体、共同墓地なら地域の墓地管理委員会に伝えます。
事前に管理者へ一声かけることで、工事に必要な申請書や手続きを確認することが可能です。
特に、寺院墓地の場合、工事を行う石材店が指定されていることがあるため、管理者から指定の石材店を案内してもらうとスムーズです。
3.改葬の手続きをする
お墓をまとめるためには、遺骨を別の場所へ移す改葬の手続きを行いましょう。
改葬は、故人の遺骨を新しい墓所に移すための引っ越し作業にあたるため、許可を取らなければなりません。
まず、改葬許可申請書を準備し、お墓のある市町村の役所に申請します。
既存の墓所の管理者から埋葬証明書を取得し、新しい墓所の管理者から受入証明書を受け取ります。
これらの書類を揃えて役所に提出したあと、交付してもらうのが改葬許可証です。
書類の不備がないように事前に準備して、円滑に手続きを進めましょう。
4.石材店に見積もりを依頼する
次に、石材店に見積もりを依頼し、元のお墓の撤去費用や条件を確認していきます。
寺院墓地などで指定石材店がある場合は、その店舗に依頼しましょう。
指定がない場合は複数の石材店に見積もりを依頼することも可能です。
相見積もりを行うことで、価格や対応、保証内容などを比較でき、納得のいく価格で業者に依頼できるでしょう。
5.閉眼法要をする
今あるお墓を撤去するときには、閉眼法要の儀式を行います。
閉眼法要は、お墓に宿る故人の魂を抜き、礼拝の対象としての役割を終わらせる大切な儀式です。
普段法事をお願いしているお寺に連絡して、日程を調整しましょう。
もしお世話になっているお寺がない場合やお墓が公営墓地や共同墓地にある場合は、墓地の近くにあるお寺に相談し、閉眼法要をお願いできるか確認してみましょう。
6.遺骨を取り出して工事をする
既存のお墓を撤去する間に、墓石の中から遺骨を取り出す作業を行います。
遺骨が大切に保管されるよう、細心の注意を払う必要があります。
取り出した遺骨は、お寺や霊園で預かってもらうのが一般的です。
山崎石材工業では、ご遺骨を整骨(きれいに乾燥させてお骨以外の不純物などを取り除く)して保管しています。
この間に、墓石の撤去や新たなお墓の設置工事を進めます。
石材店に、事前に工事工程を確認しておきましょう。
7.開眼法要をする
お墓の工事が完了し、引き渡しが終わった後は、開眼法要を行います。
新しいお墓やまとめたお墓に故人の魂を宿らせ、礼拝の対象としての役割を持たせるための儀式です。
開眼法要は、故人が安らかに眠れるよう祈り、家族や親族が新しいお墓への感謝と敬意を込めるためにも重要です。
お寺に連絡をして、開眼法要の日程を調整し、家族で参列しましょう。
開眼法要が終わると正式に寄せ墓が完了し、新しいお墓として迎え入れられます。
お墓をまとめるときによくある質問
お墓をまとめるときには、さまざまな疑問が出てくるものです。
ここでは、お墓をまとめるときによくある質問に回答していきます。
宗派が違ってもお墓はまとめられる?
異なる宗教や宗派のお墓をまとめることは可能です。
ただし、仏教・キリスト教・神道といった宗教や宗派の違いによって、墓石に刻む文字やお参りの方法が異なるため、親族の間でしっかり話し合う必要があります。
お墓をまとめるときには、故人を尊重する形にすることが大切です。
墓所に十分なスペースがあれば、宗派別に二基、建立することが望ましいでしょう。
また、公営墓地や民間墓地では宗派の違いを問われることはありませんが、寺院墓地ではその寺院の宗派に合わせる必要があります。
宗旨・宗派不問の寺院も増えていますが、他宗派のお墓をまとめることが難しい場合もあるため、事前に墓地の管理者や地域の石材店に相談しておくと安心です。
お墓をまとめるのは縁起が悪い?
お墓をまとめると「縁起が悪い」「不幸を招く」と感じる方もいますが、明確な根拠はありません。
ただし、承継者だけの判断で進めず、親戚や親族とよく話し合うことが大切です。
勝手にまとめると、後でトラブルが生じて不仲につながる可能性もあります。
親族の中に反対する意見や不安を抱いている方がいる場合は、丁寧に説明して理解を得るよう努めましょう。
なかなか意見が一致しない場合は、石材店やお寺などを交えて話し合うのも1つの方法です。
専門家が間に入ることで冷静に話し合うことができ、安心して寄せ墓を進められるようになるでしょう。
遺骨が多くて入りきらない場合は?
遺骨が多く、まとめたお墓の納骨室(カロート)に入りきらない場合には、遺骨を粉骨したり土に還したりする方法があります。
まず、粉骨を行うことでご遺骨のかさを減らすことが可能です。
粉骨は遺骨を細かく砕くことで、石材店や専門業者に依頼して行います。
不謹慎に感じる方もいるかもしれませんが、仏教的にも問題はなく、インドやアジアの仏教国でも古くから行われてきた方法です。
また、遺骨の一部を納骨室の地面に埋め、土に還す方法もあります。
比較的古い遺骨を選んで、一部を埋める方法が一般的です。
カロートに遺骨がいっぱいある場合の対処法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
まとめ
お墓をまとめる「寄せ墓」は、手順や費用を把握しておくことでスムーズに進められます。
お墓をまとめる寄せ墓には、以下の3つのパターンがあります。
- 複数のお墓をまとめる
- 土葬の古いお墓をまとめる
- 両家の墓をまとめる
お墓をまとめるときには、以下の手順で進めましょう。
- 家族・親族の合意を得る
- 墓地・霊園の管理者に相談する
- 改葬の手続きをする
- 石材店に見積もりを依頼する
- 閉眼法要をする
- 遺骨を取り出して工事をする
- 開眼法要をする
ご自身やご家族にとって最適な寄せ墓の方法を検討し、大切なご家族への供養を始めてみてはいかがでしょうか。